« 一瞬で瀕死になる出来事 | トップページ | 北川景子 »

2018年9月23日 (日)

9/23

No.10
とある情報を手掛かりに、事件の実行犯とされる黒隅・真城の二人の潜伏先が分かり一斉摘発が行われた。
召集された警察の人数に観念したのか?二人は、あっさりと逮捕を受け入れた。
それぞれが、別の取調室で聴取を受けている。
真城側
逮捕で観念したように見えていたにもかかわらず、真城は気だるそうにイスに座っている。視線も刑事には向けずどこか余裕があるようにすら見えた。
真:「何の罪で逮捕されたんですっけ?」
刑:「見に覚えがありますよね?死体遺棄です」
真:「私がやった証拠。あるんですか?」
刑:「ええ、目撃情報が。遺体発見現場に『二人の男が何かを下ろすのを見た』という証言がありました」
真:「私だ。と言う証拠にはならないでしょ?物証ですよ。物証」
刑事は、数枚の写真を取り出した。
刑:「目撃情報にあった黒いワンボックスの車を遺体遺棄現場周辺の防犯カメラから確認しました。
朝も早くだったから、通行量も少なくて助かりました。映像の中には、相棒の黒隅と写った物もあります。『同じ場所同じ時間に偶然いた』なんて言いませんよね?」
真:「・・ああ、あの人の事ですか。申し訳ないことをした。確かに死体を路上に放置しました」
刑:「認めますね?死体遺棄。では、どうして殺害したのですか?」
真:「待ってください。死体を放置した事は認めます。でも、それ以外は知らない」
刑:「何言ってるんですか?路上に転がってた死体を何のメリットも無いのに別の場所に移動させたって言うんですか?」
真:「違います。私が、あの人を車に乗せたときはまだ、生きていました。瀕死の状態だったので病院に運ぼうとしたんですが、運んでる最中に亡くなったんです。
死体を病院に運んだら『お前が殺人犯か?』と言われると思って怖くて死体を路上に放置しました」
刑:「瀕死の状態だったのは、自分達が殺そうとしてたからじゃないんですか?」
真:「してませんよ。私は」
刑:「『私は』?相棒の黒隅は、殴り殺したって言うことですか?」
真:「さぁ、知りません」
刑:「土居さんは、既に亡くなっています。あなたが、見たときに生きていたのか?死んでいたのか?なんて証明できないでしょ?そんな苦しい言い逃れでこの先やりきれると思ってるんですか?」
その言葉を聞くと真城は、すぅっと冷たい真顔になり刑事の方を見た。強ばる刑事を見透かすように真城は、気持ち悪くうっすら笑った。
真:「私は、死体を放置しただけです。物証が無いのは、刑事さん。あなた達も一緒でしょ?」
黒隅側
黒:「俺は、死体を運んだだけだ」
真城とは対照的にガタイの大きさや目付き服装からして、いかにもチンピラで真城に入れ知恵されなければ、すぐにでも口を滑らせそうだ。
教えられたように、「運んだだけ」の一点張りで乗り切ろうとしてるのだろうか?
刑:「それは嘘だろ?ここで嘘をつけばロクな事はないぞ」
黒:「証拠はあんのかよ?」
刑:「あるよ!爆発の現場付近の廃材収集場所にお前と土居さんの血痕が、見つかった。お前が、殴り殺したんだろ?」
黒:「同じ場所に血があったからって、同じ時間にいたのかまで分かんねぇだろ?」
刑:「分かるんだよ。血液の状態から、どれくらいの時間で乾いたのか計算できるんだよ。お前が、血友病とか血が固まりにくい病気でもなければ、同じ時間に居たと証明出来るんだ。なんなら血友病の検査してみるか?」
チッ!と舌打ちしてイスの背もたれに体重を預けた。
刑:「暴行を認めたな?」
黒:「あれは正当防衛だ」
刑:「フッ、なに言い出すんだ?」
黒:「本当だ!あいつが、先にいきなり襲いかかってきたんだよ!」
刑:「じゃあ、なんで土居さんは死んでお前は、のほほんと生きてるんだよ!?死んだ人間に罪押し付けてなんとかなると思ってんのか!?」
黒:「この傷を見ろ!あいつが襲った時のだよ!」
黒隅が、左腕にできた生々しい切り傷を見せつけた。
刑:「どうせ正当防衛に見せかけるために真城に後から付けてもらったんだろ?」
黒:「違ぇよ!マジであいつが、襲ってきたんだよ!だから、やり返した!そんだけだ!」
刑:「爆発の現場には、それらしい刃物は見つかってない。適当な事を言うなよ」
黒:「マジだよ!!元々襲われたのは、別の場所で人目につくからあの場所に拉致ったんだよ!」
刑:「いいか?今までお前達が、どういう風に生きてきたのか知ってるんだぞ。どこで誰をたぶらかして地獄に突き落としてきたのか?その全てをな。重ねてきた罪をそれ相応の罰で償ってもらう。よーく覚えておけ」
黒隅の訴えも空しくベテラン刑事は、鬼の形相で一度も視線を移さず睨みつけていた。
その眼力に何も言えず黒隅は、ただ舌打ちをするしか出来なかった。
どうやら黒隅を追い詰めることで事件の真相が見えてくると、別室で聴取を見ていた刑事達は、安堵の空気だった。その中に舘脇もいた。
部屋に時貞が、入ってくると館脇と一人のベテラン刑事を置いて他の刑事は皆、部屋を出ていった。
刑:「何か分かったんですか?」
と:「ええ、事件に関して」
時貞は、調査の結果をまとめた書類をベテラン刑事に差し出した。
刑:「黒隅を追い込めば、全自供も目前ですよ」
と:「そうなんですか?」
刑:「遺体遺棄を認めて、暴行も認めた。土居さんの拉致も認めた。そこまでやってて『殺人はしてない』なんてありえないだろ?アイツらが、今まで関係してきた事件の数々を踏まえれば証拠なんて無くても心証で『殺人』だって誰もが思うさ」
た:「たしかに」
と:「奴らの供述の裏付けは取らないんですか?」
刑:「どうせ嘘を並べてるだけさ」
ご満悦な刑事に時貞が、資料の内容を読み上げた。
と:「諸々の検査の結果、土居さんの『事故死』を断定しました」
刑:「は?」
た:「事故死?どういう事ですか!?」
と:「土居さんは、ゴミ焼却場施設の爆発事故によって亡くなった事が分かりました」
刑:「待てよ、土居さんは、アイツらに殴り殺されてたんだろ?内蔵はグチャグチャで爆発の前に死んでたのか?後に死んでたのか?分からないんだろ?」
と:「分かったんですよ。土居さんが、爆発事故の後にも生きていた事が」
た:「どうやって?」
と:「土居さんの遺体を改めて解剖し調べた結果、口腔内・鼻腔内に爆発火災が原因と思われるススや灰を確認した。つまり、爆発の後にも土居さんが自発呼吸をしていた証拠だ。生きていたんだよ土居さんは」
刑:「呼吸をしてただけだろ?本当に呼吸するのがやっとの状態なら・・」
と:「『爆発によって』亡くなった事は、事実だ」
悲しくも時貞は、言い切った。
た:「もし、施設爆発が、アイツらの仕業だったら『殺人』と言えますよね?」
と:「火災専門の監察官と協力し現場を総勢20名で三日間調査した。しかし、施設内の防犯カメラにも映らず、制御室などにアイツらが、侵入した痕跡は何もなかった。
それから、爆発の原因は焼却に利用される重油の送還パイプの劣化によって重油が、漏れて引火。オーバーヒートした焼却設備が自制が出来なくなり爆発した。完全に『施設側の過失』だ。その事故に土居さんは、巻き込まれた」
刑:「元々、アイツらが暴行を加えなければ助かったかもしれないんじゃないか?」
と:「爆発の影響で周辺の木々はなぎ倒され、現場付近にある作業用のタンクローリーが、数台横転するほどの威力だ。『無傷の人間なら生きていたのか?』と聞かれたら、『生きていた』とは、言い切れない。むしろ、土居さんが生きていたのは奇跡としか言いようがない」
刑:「つまり・・『事故死』て事なのか・・」
ベテラン刑事は、写し出された黒隅の聴取の様子をながめ、うなだれるように机に腰かけた。
刑:「『殺人』は、立証出来ない?・・」
と:「今ある物証では、証明できない」
心証だけでも『殺人』と言い切れると思われた事件は、思わぬ方向へと軌道修正された。
途方にくれる刑事をよそに時貞は、「以上だ」とだけ言って部屋を後にした。
大きな大きな部屋にたった二人しかいないのに空気は、驚くほど重かった。
まるで具現化したかのように肩にそれがあるように思えた。
刑:「やっとアイツらを逮捕したと言うのに・・せいぜい暴行罪か・・。何人の人達が、アイツらのせいで人生狂わされてきたのか・・。なぁ?」
刑事の表情に感化されたのか、館脇の中で荒ぶれていた感情が、今、勢いよく体を突き動かしていた。
踵を返し部屋を飛び出して時貞を追った。

« 一瞬で瀕死になる出来事 | トップページ | 北川景子 »